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ようこそ生田緑地ばら苑へ

川崎市多摩区長尾2丁目8番1号ほか(旧 向ヶ丘遊園内)

ばら苑の風景(たわわに咲くバラと緑濃き葉)

「ばら苑」の想い出  村田晴夫

私たち小田急向ヶ丘遊園園芸部出身者にとって、「ばら苑」は、それぞれの青春が埋もれている場所です。さまざまなことを学び体験した、人生の中でも忘れることのできない時期であり、また、夢のような不思議な時間を過ごした場所であったと思います。

1973年、私が向ケ丘遊園の「ばら苑」の管理を始めた頃、バラの木は大きく育ち豊満な花をたおやかに咲かせ、すでにバラの管理では最高水準以上のレベルを維持していたと思います。ところが、当時、私が不足と感じたのは、芝生についてでした。いま少し、芝生が美しければこの「ばら苑」は庭園としてもっとすばらしくなる、と直感的に感じたのです。そこで芝刈り機の新調を願い出て、芝刈り機の使い方、芽の向きを活かす方法を徹底的に研究しました。逆光に輝くバラと芝生の美しさに手応えを感じながら、夢中で「ばら苑」の管理をしたものです。

日本バラ会の小野寺透先生が企画された欧州視察旅行に先輩と私が参加し、イギリス、フランス、ドイツと、バラ園や庭園を見学したのもこの頃です。とくにウイズリー植物園で芝のエッジ処理の方法のすばらしさに感銘を受け、帰苑後すぐに実行。この処理により芝生に浮き上がる様な美しさを付加することができました。「いまの『ばら苑』なら、どこのバラ園を相手にしても一歩もひけをとらない」と、確信したことが、懐かしく思い出されます。

「ばら苑」の豊富な保有品種は、訪れるお客様の目的でもありました。古い品種、古花銘花に対しての憧れにも似た感情は、栽培する側にとっても、歴史の中に身を置いているような感覚をもたらします。その魅力に誘われて多くのお客様が「ばら苑」を訪れ、苗木をお求めになり、夢をご自宅までお持ち帰りになります。次のご来苑時にはお客様とバラ談義や苦労談を共有すること、これが担当者にとっては無上の喜びでもありました。

庭園とは、訪れたお客様に居心地よい時間を提供する場所です。バラ園が、なぜこうまでにも不思議な魅力をもつかといえば、美しい花や植物で癒される「園芸」と、さまざまな心配りで癒される「造園」の、双方の要素をあわせもつ「庭園」であるからです。これがバラ園の本質でありまた宿命でもあり、人を魅了して止まぬ魔力でもあるのです。

赤いつるバラ「カクテル」の花のアップ画像。バラとは思えないような一重咲きで、花の中心部は開花直後のため黄色。 同じ「カクテル」の遠景画像。中輪咲きでかなりたくさんの花がついている様子。

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